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ニガキ ニガキ科 ニガキ属
ニガキ、「苦木」と表すのだろう。互生する奇数羽状複葉の葉や枝は苦味がある。『良薬は口に苦し』とは、よく言ったもので、この苦味に駆虫・健胃作用があるという。また、人の暮らしでは、薬用のほか、下駄や器具材などにも利用している。
晩夏から初秋、5㎜ほどの楕円形の核果が緑藍色に熟す。サルはこの熟した実をむさぼり食う。食としてニガキを利用するのは、この時期の実だけ。枝や葉、樹皮、冬芽などは、いっさい口にしない。苦い部位を避けていると思われるかも知れないが、熟した実とてけっこう苦い。
ニガキの枝に座り、次から次に熟した実を口に入れる。ほお袋にいっぱい詰め込んでいることが、ほほの膨らみからわかるほど。その後、しばらくして口から、どろどろと多量の種子を吐き出す姿を見た時は、思わず笑ってしまった。遠い昔、スイカを食べたときに、種を口の中に残し、ほどよく貯まってから、機関銃のごとく吐き出したことを思い出したからだ。
サルの食べ物には、季節を通して、各部位(葉・花・実・樹皮・冬芽など)を万遍なく利用するものもあれば、ニガキの実のように、一年の中である時期に限って、特定の部位だけを好物とするものもあるのだ。
文章・写真 松岡 史朗