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メイガの幼虫

 メイガの幼虫 

下北半島の6月、早春の若葉もすっかり濃い緑に染まり、北国の森は初夏の香りが漂ってくる。沢沿いの谷間や民家近くの里山にはオオイタドリが生い茂り、夏をいっそう暑くさせる。この夏草の代表格のオオイタドリとサルの食性に関して、驚くべき発見をした。いや、目から鱗と思うのは、私の独り善がりかもしれないが・・・・・・。

人の背丈以上にもなるオオイタドリの群落にサルが入り込むと、オオイタドリの海に沈んでしまったかのように、彼等の姿は全く見えなくなる。それでも、長卵形の大きな葉がバサバサと揺れ、その様子からサルの居場所がわかるほど。ガリッ、ポキッと聞こえる音から、みずみずしい茎を食べているものとばかり思っていた。が、実は違っていたのだ。重なり合う茎の隙間から私が見たものは、サルが口で割った茎から“何か”を摘み、それを口に入れていた光景だった。

オオイタドリの茎を割るサル

高鳴る胸を押さえ、まじまじとサルの行動を見入ると、その何かはクリーム色をした2cmぐらいのイモ虫だった。それにしても、オオイタドリの数ある茎の節の中から、イモ虫が入っている節を間違いなく齧っている。いや、むしろ選び見定めているように見えるのだ。

そこで、すぐ傍にある茎を注視した。ななっ何と! 節に1㎜ほどの針で刺した跡があるではないか、その穴のある節を割ると、やはりイモ虫がいた。この針跡を知ってから私も百発百中となったのだ。サルはこの小さな穴の意味を充分に知っていたことになる。サルもなかなかやるもんだなぁ、とついつい感心してしまった。

このイモ虫の正体がなかなか分からなかった。地元の渓流釣りの愛好家たちには、イワナ釣りの餌として馴染のイモ虫だったが、幼虫の正確な名前を知る人がいなかったからだ。石川県の林業試験場で同定してもらい、ようやくメイガの幼虫と判明した。サルの思わぬ行動に感心させられることはよくあることだが、この出来事もまた彼等の能力の高さを物語る行動と言えよう。

文章・写真  松岡 史朗