エビガライチゴ

エビガライチゴ   バラ科 キイチゴ属

暑い暑い夏がやって来る。北国、下北半島とはいえ気温が30度を越える日が続く。ヤブ蚊やアブの襲撃、それに玉のように流れる汗が、体力も気力も奪い取ってしまう。そんな真夏の炎天下、紅色に熟したエビガライチゴの果実は、フィールドワークの辛さを忘れさせてくれる。たとえ、それがひとときの楽しみだとしても、甘酸っぱい素朴な味は、サルだけでなく私たちをも虜にする夏の逸品、やめられない止まらない状態になった人もいることだろう。

葉の裏側が白いので、ウラジロイチゴとも呼ばれている。密生する紫赤色の腺毛とまばらにある刺で、注意をしていても指先や二の腕を引っ掻くことがある。それ程痛くはないが、いくつになっても繰り返す子供の頃の失敗を思い出させてくれるほろ苦い傷が残る。

下北地方には、エビガライチゴのほかキイチゴの仲間は、初夏オレンジ色に熟すモミジイチゴ・民家や畑の周辺に多いナワシロイチゴ・やや小型で黒く熟すクロイチゴなどがあり、食通のサルたちがこれらを見逃すはずがない。

エビガライチゴ群落の中のサル

サルたちは、瑞々しく柔らかな粒を食べに食べ、まるで紅をさしたようにもなるが、完熟した粒だけを選んで食べる。堅く小さな粒には見向きもしない。美味しいところだけを贅沢に食べる行動を、一度に食べ尽くすのではなく、次の機会のお楽しみにと、先を見越すサルの知恵とする見方もあるほど。一つの食べ物の採り方にも喧喧諤諤と話しがはずむ。ニホンザルの奥深さがここにも現れる。

文章・写真   松岡 史朗