マタタビの写真

マタタビ

1998年の秋、下北半島ではマタタビが大豊作だった。葉を落としたつる性の枝にぶら下がる黄熟したマタタビの果実。サルは、枝を手繰り寄せ、その一つ一つの楕円形の果実を丁寧に、そして素早く口に入れる。見る見るうちに、ほお袋が膨らむ。何もそんなに慌てて詰め込まなくても、と思ってしまうほど。そんな好物のマタタビの果実も、黄緑色のこりこりとした早秋の時期には食べず、紅葉の盛りが過ぎた11月中旬、ぐじゃぐじゃに完熟し黄緑色になったものを好んで食べる。

マタタビの実を食べるサル

サルにとってマタタビは秋だけの食べ物ではない。雪に埋もれた厳寒の森、冬芽や樹皮がサルの暮らしを支えているが、意外なことに、マタタビをはじめとするサルナシなどのつる性樹木の冬芽や樹皮をサルが齧っていることは、あまり知られていない。

また、新緑の春、にょきにょきと新しい枝を伸ばし、柔らかな葉をつけるマタタビ。みずみずしい新葉も黄緑色の枝も、サルは喜々として食べる。マタタビが蓄えたエネルギーをサルが奪い取り、自らの生きる原動力としていることがひしひしと伝わってくる。

年間を通してサルはマタタビを利用するが、夏季だけは執着が薄れる。強い日差しの中、枝先の葉が白色に変色することは、マタタビの特徴のひとつ。緑の森によく目立ち、その在りかが遠目からも解るほど。ただ、この時期、サルは葉も枝も食べなくなる。まるで、白変した葉を避けているかのように思えるのだ。

マタタビの実を食べるサル2

『猫にマタタビ、女郎に小判』効果のいちじるしい喩えだが、先人はうまく言ったものだ。私自身、実際にネコにマタタビを与えたことはないが、ネコ科にとってはマタタビが身もこころもとろけるほど魅力のある食べ物であることをテレビ番組で知った。マタタビが好物のサルではあるが、ネコ科ほどの反応はない。

文章・写真   松岡 史朗