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ツルウメモドキ ニシキギ科 ツルウメモドキ属
晩秋から初冬にかけて、下北のサルは赤い果実に夢中になる。ガマズミ・サルトリイバラ、そしてツルウメモドキの実だ。日を追って色をなくす森で、わずかに残る赤色は新鮮で鮮烈に映る。ただ同時期、枝にびっしりとつくカンボクの赤い実には手を出さない。サルにも好みがあるようだ。
ここ数年、暖冬が続く日本列島。北国下北の山々も根雪になる時期が遅れている。1月半ばにようやく雪国の風情になった年もあったほど。
そんな冬の好日、サルの群れを追って雪の山を歩くと、オレンジ色の小片が散乱した雪面が目に止まる。サルがツルウメモドキを食べた跡だ。柔らかな新雪の上に、無残に食い散らかした跡。一心不乱に食べるサルの姿が、まじまじと眼に浮かんでくる。ほお袋の中に、小さな実をぎっしりと詰め込んだことだろう。
つる性落葉樹のツルウメモドキ。長く伸び、樹に絡み付くつるは、太いもので直径20センチにもなるという。7~8ミリの球形の果実は、秋深くに黄色に熟し、3つに裂け、中からオレンジ色の仮樹皮に包まれた種子が現われる。この種子をサルが食べるのだ。
たた゛、ツルウメモドキの人気は何もサルだけに限ったものではない。つるが描く自由奔放な線、素朴な美しさのオレンジ色の仮種皮などが、新春を彩る活け花の素材として需要が高く、私たち人も親しんでいる。また、野鳥にとっても大好物でツルウメモドキをめぐる争奪戦、以外と競争相手が多い。
文章・写真 松岡 史朗